見た目だけで分かる!このパールは本物?偽物?本真珠とイミテーションパールの見分け方

ブラックライトを当てて蛍光するものが本真珠、と言われていることを目にすることもありますが、上の画像はプラスチックパール(イミテーションパール)です。蛍光していますね。。
他にも、擦りつけてザラザラするものが本物と言われています1。本真珠の性質として正解ではあるのですが、ザラザラしたイミテーションパールは存在しえないか?とか、どの程度のザラザラ感だったりツルツル感だったりするものが正解なのか?2ザラザラ感が足りないから偽物?そもそもこすり合わせている片方が本物でもう片方が模造だとどうなの?3など、鑑別の基準とするには主観的で、判断が難しいような場面もあるかと思います。(第一に擦り付けるのは躊躇してしまいますし。)
そこで、本稿では真珠光沢のあるパールが本真珠なのかイミテーションなのかをブラックライトやザラザラ感に頼らず見分ける方法についてご案内します。
実は、と言いますか当然にして、イミテーションパールは天然や養殖真珠と構造や成分が異なっているため、「見た目」で判別出来ます。
見た目の決定的な違いであれば客観性も高い上に擦りつけるよりは遥かに試しやすいでしょう、
ということで本稿では文字通り”見”分けるポイントをご紹介します。
※ここでの「本物」とは、イミテーションパール(模造真珠)ではない養殖および天然真珠のことを便宜的に指しています。品質やその他の付加価値的な意味での”本物の真珠”の様な意味合いは含みません。また、イミテーションパールを偽物と言う場合にも、「価値がない」と言っているワケでも無いです(実際、模造真珠は我々が取り扱っている商品でもありますし)。相対的な意味での本物・偽物です。
天然・養殖真珠とイミテーションパールの種類や構造
天然・養殖真珠について簡単に
天然or養殖の違いは成り立ちの違いで、ざっくり言うと天然真珠は人の手を介さずに自然界で出来上がった真珠。養殖真珠人の手を介して育てられた真珠です。
真珠光沢(干渉色を伴なった光沢)がある物と、真珠光沢がない物とがあります。
それぞれ代表的な真珠の種類は以下のような物があります。
真珠光沢がある物 | 真珠光沢が無い物 |
あこや真珠、白蝶真珠、黒蝶真珠、マベパール、淡水真珠など | コンクパール、メロパールなど |
イミテーションパールと比較される真珠は、ほとんど全て「真珠光沢のある物」でしょう。
アコヤ真珠や淡水真珠・南洋真珠などが真珠光沢のある真珠で、これらの真珠の外観は、光沢が干渉色を伴なっており、色は白・黒・グレー・イエロー・ピンク・オレンジ・ゴールドなどで、半亜透明(光は透るけれど、ぱっと見は不透明)です。
本稿は、真珠光沢がある物について扱います。
イミテーションパールについて簡単に
イミテーションなので、真珠っぽい何かであれば実際のところ何でもあり得ますが、中でもメジャーなものについてご紹介します。
イミテーションパールにも真珠光沢のある物とない物があります。
真珠光沢の無い物としては、陶器であったり、貝殻や木の実を丸く磨いたもの等があります。
本稿で扱う「真珠光沢のある物」は、ベースとなる素材(核)にパール光沢のある塗料(パール顔料/パールエッセンス/パーレッセント)を外側や内側に塗布して作られています。
見かける機会が多い物は外側に塗布したものでしょう。
コットンパール、シェルパール、クリスタルパール、プラスチックパールなどなどのたくさんの種類があり、例えば貝殻核がベースなら「貝パール」。プラスチックが核であれば「プラスチックパール」。ガラスが核であれば「ガラスパール」などと呼ばれております。
内側にパールエッセンスを塗ったバージョンは、透明なガラス玉の中にパールエッセンスが塗られたり入っているものなどです。
天然・養殖真珠とイミテーションパールの光沢を作り出す物は違う
そもそもイミテーションパール自体が何でも有り得るため、違いを挙げると無数に出てきてしまいますが、本稿に関係する「真珠光沢」に関係する部分の違いを取り出すと、
- 天然真珠や養殖真珠の真珠光沢は真珠層から生まれている。
- イミテーションパールの真珠光沢は人工的な塗料から生まれている。
です。
イミテーションパールの塗料は、天然・養殖真珠の真珠層の組成や構造をシンセサイズしたものではないんです。全く別物です。
どのように違うかを次にご紹介します。
●天然真珠や養殖真珠の真珠光沢の仕組みの概要
天然・養殖真珠の真珠光沢は、ミクロン単位のサイズの鱗状の結晶のブロックが敷き詰められた極薄い層が幾重に堆積した真珠層から生まれています。
入ってきた光が真珠層を通り反射するときに、ブロックの隙間で回折したり、それぞれの層で反射し干渉したりすることで淡い虹色を生んでいます。

●イミテーションパールのパール塗料の光沢の仕組みの一例
イミテーションパールの真珠光沢は、特殊な加工を施した剥片状の粒子から生まれています。
剥片状の粒子が光の干渉を起こすことで真珠のような光沢が得られています。
この粒子の大きさは、細かすぎると光沢が出ないため、粒々が目で見て分かるほどの大きさである場合がほとんどです。
この粒子を塗料に混ぜベースとなる素材に塗布したものがイミテーションパールです。

見分け方
上述の様にイミテーションパールと天然・養殖真珠はそもそも違う物なので、ヒントはたくさんあります。
有核の養殖真珠の場合、核の素材は貝なので、プラスチックパールや樹脂パールとの重さの違いもヒントになるでしょう。コットンパールは明らかに軽いですし、プラスチックパールもかなり軽く感じるでしょう。
ただし、貝パールだと重さ具合もほぼ一緒のため気づかないかもしれません。
冒頭で述べたようにブラックライトは当てにならず、擦り付けても微妙なうえ、重さでもよく分からないときはどうすればよいか?
そもそも表面の見えている部分の素材や構造が違うのだから、外観で見分けられそうですね。
まずは肉眼で
内側にパールエッセンスを塗布したイミテーションパールは、表面光沢とパール光沢とで反射してくる深さが異なり、手に取って見ると、外側はツルツルなのになんだか見た目に不均一に光っている(パーリーなマニキュアが入った瓶の、ガラスが薄い版と言った感じと言えばよいでしょうか?)、など違和感があり、玉の中にパール様の物が包まれてる様に見えるため、天然真珠や養殖真珠ではないことは割とすぐ分かると思います。
外側にパールエッセンスを塗布したイミテーションパールがぱっと見では区別がつかないものが多いと思いますので、以下に少し詳しくご案内します。
ドリルされた穴を見る
天然・養殖真珠は硬い真珠層に穴を空けるため、真珠光沢を持った部分が穴に被ることはありません。真珠光沢のある部分が穴を塞ぐように被っていたり、内側に入り込んでいる様な場合は、それは天然や養殖真珠ではないと思ってほぼ間違いありません。イミテーションパールか、天然・養殖真珠に何か塗ったりくっ付けたりしている特殊(宝石としては開示が必要)な物でしょう。

穴の大きさがヒントになる場合もある
一般的なネックレスでしたら、天然・養殖真珠の穴の大きさはほとんど0.6~0.8mmほどです。一方、イミテーションパールは1mmを超えている場合がほとんどです。
ある程度の数を見慣れてくると「穴が大きいなぁ。もしかしてイミテーションパールかなぁ?」と違和感を覚えるかもしれません。
次に拡大して観察する
リングやイヤリングなどは穴が隠れるデザインなどでは、肉眼で見ただけではヒントが無い場合もあるので、つぎは拡大して見てみます。
養殖・天然真珠の真珠層を構成する物質がミクロン単位のサイズであることに対して、パール顔料を構成する粒子は粒々が分かるくらいのサイズ感であるため、10倍程度に拡大できるルーペで観察することで容易に外観の違いが分かります。
イミテーションパールを10倍ルーペなどで拡大してみると、表面が全体的に極細かなパーティクルの集りのような、ぽつぽつした感じの見た目になっています。英語ではspeckle(スペックル)な見た目と言っています。以降、日本語だと長いため「スペックルな感じ」と表現します。
以下がちょっと強調したスペックルな感じのイメージ図と、現物の写真です。

実物の写真









天然・養殖真珠でもスペックルな感じに見えるところが部分的にはあるかもしれませんが、真珠光沢を呈する部分がほぼ全体スペックルな見た目であればイミテーションパールと考えてほぼ間違いありません。
反対に、このような特徴が見られない場合はイミテーションパールではないと考えてほぼ間違いありません。(※真珠であるという確定にはもう少し検査が必要です。)
リングやイヤリングになっていると前述の穴口が見えない場合も多いですが、この方法でしたら判別できますね。
余談ですが、養殖・天然真珠を拡大して見ると(ハンドルーペだと難しい場合が多いですが、、)指紋状の模様が見えることもあります。真珠層を構成する鱗状のブロックが並んでいる模様なのですが、これが「ザラザラ」の原因だったりします。
見分け方のおさらい
特徴のおさらいです。構造の違いもふまえた情報も付け足しました。
イミテーションパールにしかない特徴 | 天然・養殖真珠の場合 |
肉眼で見る ・真珠光沢のある部分が穴に被さったりしている。「破れました!」的な不規則な形で被さったりする。 | 肉眼で見る ・真珠光沢がある部分は穴に被さらない。不規則な形になっていることはほぼ無いと考えてよい。 |
ルーペで見る ・拡大して観察すると、真珠光沢のある部分が細かくポツポツしたスペックルな感じの見た目をしている。 | ルーペで見る ・拡大して見ても、スペックルな感じの見た目はしていない。あったとしても部分的。 ・極細かな指紋のような模様が見えることがある。 |
ルーペで見る ・塗料はとても薄いため、穴をのぞき込んでも明らかに厚みを感じる層のような物は見られない。(光沢は豊かなのに真珠層は見えないほど薄い。) ![]() | ルーペで見る ・穴をのぞき込むと、有核真珠の場合は、真珠層と核の境目が見えることがある。 ![]() |
持った感じ ・重みは核によって異なる。大きくてもすごく軽いものがあったりもする。 | 持った感じ ・重みはほぼ見た目に連動する。 |
チャレンジ
以下は養殖真珠とイミテーションパールを並べて撮影した写真です。
どうでしょう。見分けられますか?



正解は脚注に!5
おまけ-ブラックライトで蛍光させてみた
冒頭でブラックライトでの蛍光では見分けることは不可能、と言いました。以下に試しに色々なパール(養殖真珠や模造真珠)にブラックライトを当てた画像を載せました。(青紫色の可視光が混ざった長波紫外線のライトです。)




本物/偽物の判別には、ブラックライトはあまり当てになりませんね。。
(UVは全然意味がないというわけではなくて、真珠の加工/未加工のヒントとして使われています。6)
まとめ
これは本物の真珠か?と確かめたくなる場合と言えば、譲り受けたものであったり、古物の購入だったりでしょうか。いずれの場合でも、真珠同士であったり、歯にこすりつけたりする事はちょっと気が引けますし、売り物であれば「擦りつけても良いか?」と店員さんに確認することも気が引けるでしょうし、断られても仕方ないとは思います。第一、本物と偽物をこすり合わせていたとしたら、結局どちらが本物なのかは分からないですし。
また、よくブラックライトで見分けられると言われていますが、イミテーションパールはとてもたくさんの種類があり、ブラックライトへの反応も様々。さらには蛍光が見えない本物の真珠もあったりしますし、これでは断定できませんね。
そこで、天然・養殖真珠と模造真珠では表面の素材そのものが異なるので「外観で判断できる」ということをご紹介させていただきました。
10倍程度に拡大して観察したときに、真珠光沢をもった部分全体が「スペックルな感じの見た目」をしている場合、その真珠の様な物はイミテーションパールと考えてほぼ間違いありません。
お店で丁寧に品物を見ることは不思議なことでは無いですし、ルーペで拡大する程度でしたら断わられることも少ないでしょう。
もちろん、お店で販売されている物は販売者さんの示している通りの物である場合がほとんどでしょうし、見分けなければならないという様な状況になることは殆ど無いとは思いますが、お手持ちのパールアクセをちょっと見てみて、そっくりに見えても案外違う物なんだなぁ、とアクセサリーの素材に興味を持つきっかけになりましたら幸いです。
参考サイト
https://www.gia.edu/gems-gemology/summer-2014-labnotes-shell-pearl
https://nihonkoken.co.jp/en/pearl
https://www.rse-lab.jp/discrimination/inspectionitem/index.html
https://www.ehime-pearl.jp/glossary
https://www.gaianotes.com/kiraradoh/pearl_basic.html
- 歯に擦り付けてみるテストはありますが、余計に気が引けるように思います。。また、これも「ヒント」にしかなりません。 ↩︎
- 著者がいくつか異なるメーカー・種類の模造真珠を歯に擦り付けてみたところ、ちょっとザラザラ感じるものがいくつかありました。 ↩︎
- 模造ミガキ&アコヤ真珠・模造ガラスキスカ&アコヤ真珠の組み合わせだと、どちらもツルツルした感じでした。 ↩︎
- 日本光研工業株式会社,パール顔料,パール顔料とは ↩︎
- 正解は、全て画像に向かって左側がイミテーションパール、右側が養殖真珠でした。 ↩︎
- https://www.rse-lab.jp/discrimination/inspectionitem/index.html ↩︎