7月の誕生石の新顔「スフェーン」ってどんな宝石?
はじめに
「スフェーン」。ミネラル・コミュニティーではチタナイト(タイタナイト)、他には楔石(ウェッヂストーン)などと呼ばれていて、2021年に7月の誕生石に新たに加わった宝石です。ところが、スフェーン自体そんなに広く認知されていなような気もしております。そこで、「名前は聞いた事がある」と言う方から「スフェーンを知らない」という方に向け、スフェーンという宝石について簡単にご紹介いたします。
スフェーンの見た目
どんな色?
淡いものから濃い物までのイエロー~ブラウン(ウッド系、メープル、オレンジ、焦げ茶色)や、オリーブ、ペリドット、(レアですが)グリーントルマリンやエメラルドの様なグリーン。
透明?半透明?不透明?
宝石にされるものはほとんどが透明です。パワーストーンなどでは半透明の物もあります。
輝きは?
光沢はとても強いです。結構白く反射してきます。
特徴は?
虹色のプリズム光と、独特のギラギラ感が特徴的です。石の向こう側が2重に見える「ダブリング」が目立ち、虹色の分散がダブって見え、加えて光沢も良いので“ギラギラ感”があるのだと思います。
スフェーンの魅力
著者の主観ですが、5mmを超えたくらいのサイズのスフェーンは、分散(白い光を虹色に分ける差分)が大きく、かつ石の向こう側からの光が2重に見える「ダブリング」が強めなため、ふとベースの色を忘れるくらい光学的な効果に酔わされるところかな?と思います。
ボディーカラーがメープルであれ、薄いイエローであれ、濃いブラウンであれ、グリーンであれ、「ん?あれ?虹色がダブって見える。。」「ちょっと動かすとギラギラ。」という方に思考を持っていかれます。
エメラルドグリーン色のスフェーンについても同じで、緑色が十分に濃いのに、いろいろな色が、しかも赤い色までもがところどころ見えて、しかもダブって見えるという、占いの水晶玉より強い“酔い”を誘っているような気がします。
この強い虹色とダブリングがスフェーンらしい魅力かな?と思います。
スフェーンは硬い?強い?
モース硬度は5-5.5くらいで、比較的柔らかい部類です。
また、割れ欠けしやすいです。
環境への耐性は問題なく、薬品や紫外線で色が変わってしまうというようなことは現状報告がなく、通常の環境でしたら色褪せたり、不可逆的に変色したりすることはないかと思います。
スフェーンの取り扱いについて
●デザインと着用シーン:石が繊細なスフェーンのジュエリーは、よく動く場面での着用は控えることが得策です。思わず何かとぶつかって割れてしまう様なことが他の宝石よりも起こりやすいためです。
運動中や運転中などでの着用は全ジュエリーでおススメしておりませんが、他のシーンで、例えば「手を洗うときにリングを蛇口にぶつけてスフェーンが割れた」というようなことは十分に有り得ます。すっと外して保管できるジュエリー用のポーチと共に持ち運び、忙しなく動くことが無いオケージョンでお召しいただくことで長く楽しんで頂けるかと思います。
●保管:前述の通り、環境中にあふれている石英(モース硬度7)より柔らかいため、使用後はチリやホコリを払い、出しっぱなしにせずケースや袋の中で保管することをお勧めします。
●お手入れ:日常的なクリーニングは柔らかい布やブラシで軽く行う程度にして頂き(メガネ洗浄機などの超音波洗浄機はNGです。)、本格的なクリーニングにつきましてはプロにご依頼ください。
●その他:薬品や紫外線への耐性はありますが、クリーニングに気を遣う宝石のため、薬品との接触や光線は避けるに越したことはありません。特にジュエリーにセットされてい場合、細かなところに入った汚れは取れにくいですし、地金も光線焼けしたりしますし。
スフェーンに似た宝石
「ジルコン」
先ずは「ジルコン」でしょうか。同じように虹色プリズムがあり、ギラギラ感もある宝石です。
違い:ジルコンの方が虹色の出方が優しく、ダブリングもやや控えめで、スッキリした輝き方をしていますかね。他、鮮やかなブルーや大粒のカラーレスストーンはスフェーンでは見たことが無いです。
ジルコンは12月の誕生石でもあります。
「ガーネット (アンドラダイト系)」
ガーネットグループの中の、デマントイドやトパゾライトなどの類も、虹色プリズムがあり、光沢が強く、色もブラウン・イエロー・グリーンなど似たものがあります。
違い:ただ、ガーネットは単屈折。ダブリングがありません。石の内側がブレて見えることは無いです。
ガーネットは1月の誕生石でもあります。
「スファレライト」
こちらはメジャーな宝石ではないですが、凄い分散と強い光沢をもつ柔らかい宝石です。色系統も似たようなものがあります。(あと、語感も何となく似ているような気がします。)
違い:スファレライトは「単屈折」なので、スフェーンの強烈なダブリングは一切見えません。
スフェーンのストーリー
スフェーンを新種の鉱物として認識したマーク・オーガスト・ピクテさんの誕生月が7月だったことと、外観が日本の夏の森を連想させることから、7月の誕生石に選ばれたそうです。
参考文献
まとめ
2021年に7月の誕生石に加わった「スフェーン」。誕生石とはいえ、そんなに広く認知されているかな?と思い、老婆心ながらスフェーンという宝石について簡単にご案内させていただきました。
イエロー・ブラウン・グリーンなどの色がメジャーで、虹色プリズムが強く、石の内側からの光が2重に見え、ギラギラ感のある宝石スフェーン。
ちょっと壊れやすい性質がありますが、ケアのポイントを知って頂くことで、数ある天然宝石の中でも最高クラスの虹色ディスパージョン(ファイア)を楽しめる魅力的な宝石です。
その他、似たような外観の宝石とのざっくりした見た目の違いをご紹介しました。ジルコンは12月の誕生石。ガーネットは1月の誕生石。(場合によっては間違えてはならないときもあるかと存じます故。)
スフェーンと言う宝石を手に取って頂くきっかけになりましたら幸いでございます。
おまけ
オーガストさんが7月生まれで新種と認識した方で、、と、著者の頭がちょっとこんがらかってますが、
元々7月の誕生石だったルビーを「灼熱の夏7月」のイメージで覚えていたので、「梅雨明け太陽光ギラギラ」のイメージでスフェーンは7月の新誕生石として記憶しました。